公開日: 2024年12月4日
最終更新日: 2024年12月4日
源泉徴収制度とは,給与などを支払う者が,支払う際に所得税額および復興特別所得税を差し引いて国に納付することです.
私は2022年4月に会社を設立し,現状ひとり社長となります.つまり,給与支払者であり給与受給者となります.本記事は,給与支払者向けの内容です.令和4年分(2022年分)の年末調整の流れをこちらの記事で説明したのですが,令和6年分(2024年分)の年末調整の流れも説明します.
給与所得の源泉徴収事務は,大きく以下2つの事務に分けられます.
- 月々の給与等を支払う際に行う源泉徴収事務
- 年末調整事務
本記事では,年末調整事務に絞って説明します.なお,月々の給与等を支払う際に行う源泉徴収の流れはこちらの記事で説明をしています.
令和6年分(2024年分)の年末調整事務の流れは以下になります.この流れで説明します.
- 令和6年分 (2024年分) 所得税の定額減税の実施
- 年末調整の説明
- 各種控除額の確認
- 年税額の計算
- 税額の還付・徴収,納付
- 給与所得の源泉徴収票・法定調書合計表・給与支払報告書の作成・提出
令和6年分 (2024年分) 所得税の定額減税の実施
令和6年度税制改正に伴い,令和6年分所得税について定額による所得税額の特別控除 (定額減税) が実施されることになりました.
令和6年分の所得税に係る合計所得金額が1805万円以下の者 (給与収入のみの場合,2000万円以下)であり,特別控除の額は,次の金額の合計額となります.
- 本人: 3万円
- 同一生計配偶者または扶養親族: 3万円 / 1人
年末調整の説明
給与の支払者は,月々の給与等を支払う際に行う源泉徴収事務に基づき,毎月(毎日)の給与の支払の際に所得税および復興特別所得税の源泉徴収をします.この源泉徴収税額は,主に以下の理由で年税額と一致しません.この不一致を精算する手続きが「年末調整」となります.
- 年の中途で給与の額に変動がある
- 年の中途で控除対象扶養親族の数などに変動がある
- 生命保険料などの控除などは,年末調整の際に控除する
なお,給与等の支給人員が常時10人未満の源泉徴収義務者は,給与等や退職手当等の源泉徴収をした所得税および復興特別所得税を以下年2回にまとめて納付できます.これを納期の特例と呼びます.私の会社はこの特例を受けています.
- 1月から6月までの源泉徴収税額の納付期限:7/10
- 7月から12月までの源泉徴収税額の納付期限:翌年の1/20
※特定を受けるには,「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を提出し,税務署長から承認を受ける必要あり.(税務署から承認や却下の通知がなければ,承認があったものとみなされる)
年末調整の対象とならない人の概要は,主に以下となります.
- 本年中の主たる給与の収入金額が2000万円超
- 本年分の給与に対する源泉所得税および復興特別所得税の徴収猶予または還付を受けた人
- 2カ所以上から給与の支払いを受けている人で,他の給与支払者に扶養控除等 (異動) 申告書を提出している人,もしくは年末調整を行うまでに扶養控除等 (異動) 申告書を提出していない人
- 年の中途で退職した人
- 非居住者
- 日雇労働者など
各種控除額の確認
給与支払者は,各種控除額を確定するため,給与所得者 (給与を受け取る者;従業員) から以下書類を受け取り,確認をします.
- 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
- 給与所得者の基礎控除申告書
- 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 年末調整に係る定額減税のための申告書
- 所得金調整控除申告書
- 給与所得者の保険料控除申告書
- 給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書
内容によっては,以下のような控除を受けることができます.
申告書 | 対象控除 | 申告書の受取期限 |
---|---|---|
給与所得者の扶養控除等(異動)申告書 | 定額減税,扶養控除,障害者控除,寡婦控除,ひとり親控除,勤労学生控除 | 毎年最初の給与等の支払を受ける前日まで |
給与所得者の基礎控除申告書 | 基礎控除,(定額減税) | その年最後に給与の支払を受ける前日まで |
給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 年末調整に係る定額減税のための申告書 | 定額減税,配偶者控除,配偶者特別控除 | その年最後に給与の支払を受ける前日まで |
所得金額調整控除申告書 | 所得金額調整控除 | その年最後に給与の支払を受ける前日まで |
給与所得者の保険料控除申告書 | 生命保険料控除,地震保険料控除,社会保険料控除,小規模企業共済等掛金控除 | その年最後に給与の支払を受ける前日まで |
給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書 | (特定増改築等)住宅借入金等特別控除,(定額減税) | その年最後に給与の支払を受ける前日まで |
保存期間
給与所得者 (給与受給者;従業員)により上記のような扶養控除等申告書等の提出を受けた源泉徴収義務者は,その申告書等の提出期限の翌年1月10日の翌日から7年間保存する必要があります.
国税庁 | No.2503 給与所得者の扶養控除等申告書等の保存期間 (令和6年4月1日現在法令)
年税額の計算
年税額の計算は,以下URLを参照にし,給与所得に対する源泉徴収簿を使用します.
定額減税の計算に関しては以下様式を利用します.
記載方法
給与所得に対する源泉徴収簿の記載例は以下になります.
給与所得に対する源泉徴収簿の以下項目に記載するのに以下を利用していきます.
- ⑦から⑨を算出:国税庁 | 令和6年分の年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表
- ①から③を算出:国税庁 | 令和6年分 源泉徴収税額表
税額の還付・徴収,納付
税額の還付・徴収,納付は,以下プロセスで進めます.
- 過不足額の精算 (税額の還付・徴収)
- 税額の納付
過不足額の精算
本年分の給与所得に対する年調年税額の計算後,その年調年税額と徴収税額の合計を比べて過不足額を求めて,その精算をします.精算方法は大きく以下になります.
- 徴収税額の合計が年調年税額の合計より多い場合:過納額を還付
- 徴収税額の合計が年調年税額の合計より少ない場合:不足額を徴収
国税庁 | 令和6年分 年末調整のしかた | 4 過不足額の精算
税額の納付
過納額を還付もしくは不足額を徴収が完了次第,所得税徴収税高計算書 (納付書)に記載し,徴収税額を管轄税務署に納付します.
国税庁 | 令和6年分 年末調整のしかた | 5 税額の納付と所得税徴収高計算書 (納付書) の記載
なお,以下URLによると,所得税徴収税高計算書 (納付書)は支払金額が0円でも提出します.
e-Tax | 源泉所得税及復興特別所得税の納付税額が0円となる場合でも徴収高計算書データの送信は必要ですか
e-Tax | 所得税徴収高計算書(源泉所得税)の作成・送信から納税
給与所得の源泉徴収票・法定調書合計表・給与支払報告書の作成・提出
年末調整後,給与支払者は以下書類を作成し提出していきます.
- 給与所得の源泉徴収票
- 給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表 (法定調書合計表)
- 給与支払報告書
給与所得の源泉徴収票は,受給者 (従業員) および管轄の税務署に提出されます.税務署にて所得税の算出に使用されます.
法定調書合計表の正式名称は,給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表です.給与所得の源泉徴収票や退職所得の源泉徴収票,報酬,料金,契約金及び賞金の支払調書など 6 種類の法定調書の内容を記載します.各書類には金銭の支払先を記載するので,金銭支払いの流れを税務署が把握するのに使用されます.金銭を受領した会社や個人が確定申告等を間違いなくされているかを確認することができます.
給与支払報告書は,受給者 (従業員) の市区町村に提出され,従業員の住民税の算定に使用されます.
各書類の提出期限と提出先,提出方法は以下になります.
提出期限 | 提出先 | 提出方法 |
|
給与所得の源泉徴収票 |
翌年の1/31 (今年の分の給与所得を翌年の1/31) |
受給者 (従業員) | 電磁的方法 (e-mailなど) |
支払者管轄の税務署 | e-TAX | ||
給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表 | 翌年の1/31 (上記同様) | 支払者管轄の税務署 | e-TAX |
給与支払報告書 | 翌年の1/31 (上記同様) | 受給者 (従業員)の市区町村 | eLTAX |
給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表に関しては以下様式を利用します.
国税庁 | 令和6年分 給与所得の源泉徴収票等の法定調書の作成と提出の手引
国税庁 | No.7411 「給与所得の源泉徴収票」の提出範囲と提出枚数等
参照
以上